柔道整復師(術)とは

『柔道整復術』。 初めて耳にする方がほとんどではないでしょうか。

伝統的ないかめしい、あるいは柔道に関係のある何か、かなという印象でしょう。柔道整復術とは、実は皆さんの近所にある、接骨院、整骨院の法律上の呼び方なのです。ちなみに『柔整』又は『ほねつぎ』と短く略した言い方もあります。

柔道は昔からの日本の武術の一つです。 敵を倒すための「殺法(格闘技)」と、敵味方を問わず骨折・脱臼などの負傷者を助けるための「活法」の、二つの面を持っています。弱いもの、傷ついたものへのいたわりの心、保護の技術が発展して今の柔道整復術になりました。ちなみに、格闘技の法はスポーツの柔道となって世界中に広がっています。


温かい人の手による治療が基本

柔道整復術は、長い歴史の中で中国の医学をとり入れ、江戸時代末期には長崎でオランダ医学を、明治の初期には西洋医学にも学び、骨格を正し、からだの運動機能を発達させる「民族医療」として形をととのえ、庶民に親しまれてきました。
しかし、輝かしい明治維新も一方では西洋崇拝の大波を生み、日本の伝統的な宝を押し流すことも多く出ました。 陶磁器、浮世絵などの海外流出や、お寺や仏像こわしに始まり、西洋医学を採用する反面これまでの漢方・東洋医学の廃止などです。 骨つぎ(接骨)も禁止になりました。

それから50年後の大正7年、一般国民の強い要望や、柔道界の発展などが重なり、やっと骨つぎにも「柔道整復」の名で法的に営業許可がおりました。

その後、何度か法律の改正があり、健康保険を使う今日に至っています。 また、昭和45年に制定された「柔道整復師法」によって、接骨・整骨院の特徴がますます発揮されるようになりました。 それは次のようなことです。

1. 薬物を使わないので薬づけにならない。
2. 切開などの外科手術をせず、自力回復につとめる。
3. 電気や光線などの物理療法によって、からだの運動機能をのばす。
4. 和・洋・中医学の理論と経験を一体化して、自然治癒力を高める。

人のからだの働きに沿ったこのような療法は、からだに無理や負担をあたえません。 とかく利益第一、科学技術優先のため人間がないがしろにされがちな今日、温かい人の手による無血療法の柔道整復術は、栄養学・運動学を吸収し、予防医学へとワクを広げ、21世紀に向かっていっそう研究を進めなければならない、最先端療法の一つともいえるのではないでしょうか。


人は、誰でも自然治癒力を持っている

病気やケガをしても、人は、それが自分の体力の限界を越えていない限りは、回復します。 こうしたことは人に限らず、生物みんなが持っている生理上の仕組みです。 このような能力を自然治癒力といいます。

人間は30兆とも60兆ともいわれる膨大な細胞からできており、この細胞の働きこそ生命活動であり、自然治癒力の源といえます。

細胞は毎日、分裂、再生を繰り返し、からだを維持しています。 たとえば、わかりやすいことでは、皮膚の入れ替わり(アカ)です。 病気やケガにあった部分の細胞も、それぞれ回生に必要な時間をかけて再生します。

つまり、どの疾病でも治ってみれば、その裏に自然治癒力が働いていたということです。

自然治癒力を高める方法

1. バランスのとれた栄養をとる。
2. 自分に合った運動をする。
3. 適度の休養(睡眠)をとる。
4. 健康をつかみとろうという、強い願いをもつ。

まとめてみれば、あまりにも当たり前すぎることですが、いざ実践するとなると大変難しいことです。 ます、4.の健康への強い願いと意志を持ちましょう。

たとえ病気やケガをしても、早く治すことができるでしょう。